二つのレジリエンス、ダイナミックな道を。

レジリエンスは、一般に「しなやかさ、回復力、弾性」と表現される。レジリエントシティ等ハードの側面でも使われることもあれば、心のありかた等ソフト面でも多用されている。力を逃がすために建物に遊びを持たせる、揺らがせる。どんな風が吹いても、柳のようにしなやかな心でー。自然災害が多い日本の代名詞として形容されることも。

そんなレジリエンスには2種類あるという。

Resiliencies contrasted (正反対な二つのレジリエンス)

Static resiliency (もとに復元 構造変化なし 

Dynamic resiliency(もとに復元せず、構造変化あり☆)


私は、上記の整理がなければ「レジリエンス」という言葉の多面性、二義性を理解していなかった。そこに本来のことばが持つダイナミックさを全く持って欠いていた。何も理解せずこれまでぼんやり使ってきた。

これは、偶然の有難いご縁でこの春お会いした工学博士岡田憲夫先生から教えていただいた学びだ。

ご専門は、災害リスクマネジメント、総合防災学、土木計画額、減災まちづくり論等。京都大学名誉教授。 関西学院大学災害復興制度研究所 顧問・指定研究員、日本リスク研究学会賞、カナダ・ウォータールー大学TD Walter Bean Award in Environment、国際総合防災学会Distinguished Research Award受賞。日本自然災害学会会長など歴任、現在国際総合防災学会(IDRiM Society)会長 )を招いた勉強会で、35年取り組んできた智頭町のまちづくり、社会システム論 プロセス含めて研究されている。

岡田先生は、鳥取県智頭町のまちづくりに35年以上携わられまた数多くの国際機関でも活躍され世界に、日本に新たな風を齎すまさに”GLOCAL”な方だ。そんな岡田先生から、自分自身とGLOCAL CENTER*へとても有難いフィードバックを頂いた。(*What’s GLOCAL CENTER? → Who we are

なぜ、人材育成・教育のNPOが?防災?と感じられるかもしれない。 世界はひとつだ、全て繋がっている。異分野で活躍されている方からの言葉こそ、今の私たちがどこにいて、社会にどんな役割を果たしアクションして行くことができるのか、複眼的にそれらを見つめるヒントになる。全体像を捉えようとする大きな視野で、繋がるべき点と点、人と人をつなぐ媒介となりコラボレーションをするための私にとって大切な時間だ。

2021年4月に GLOCALがオフィスを構えるImpact HUB Kyotoにて行われた勉強会にて岡田先生に初めてお目にかかり、国内外でのご活動、ご研究の軌跡についてお話しをうかがった。(この際の📓はここでは割愛させて頂く。この場と、ご縁に心から感謝したい。)その後、レジリエンスについて私がどういうわけか質問をさせていただき冒頭の貴重なお話を頂くこととなった。 私の学びの整理のプロセスと、御礼を込めてこのblogを岡田先生へのオープンレターとして書きたい。


「行元さんやグローカルセンターがしていることは、新たな風を運び込むpatioを創るようなものかもしれない。」


patio【名】パティオ、中庭、テラス



!!!

「グローカルセンターの活動を拝見すると、形式に命を吹き込み柔らかく生き物・生命体にしていくような。」

!!!!!!

こんな形で私たちの活動を表現いただくなんて、このこと自体が私にとって新鮮であった。そして照れ臭くも素直に嬉しかった。私たちの活動に新たな社会的な意義、意味、命を与えていただいたような気持ちになった。

例えば、GLOCALが行う研修。ちがい面白がるチカラとは?という問いのもと20-60代が一堂に会し、世代や文化の違いを楽しむものがある。 学生が講師(スピーカー) となる。

岡田先生の物事の見方が私にとって、新しくとても柔らかで美しい。

「研修自体は漢語、それをやまと言葉(ひらがな)に変えて表現すると、色んな人が新しいことに入っていく慣らし/馴らし(ならし運転をするための集まり)本来みんなでならしていきましょう。というもの。習う。慣れ、習う=研修。漢語もある意味外国語、最後にピンとくる言葉は大和言葉。長くなるけれど認識や概念が拡がる。それをやまと言葉にかえていく。 カタリスト(触媒)その人がいることで、いなくても成り立つけど、いると一気に進む。カタリスト的な意味のファシリテーター、漢語形式ばったことを柔らかく、和語(ひらがな化)生き物にしていく活動をされている。行元さんやグローカルセンタースタッフご自身がカタリストであろう。こうした場を開き、集まり、 習う、慣れるを繰り返す。そのプロセスがある種のトランスフォーマーの役割ともいえる。」

冒頭のレジリエンスの言葉の認識が広がったように、「研修」という言葉もまた岡田先生の見方で柔らかく広がり体温を感じることができた。

また、驚いたことに私のインタビュー記事を事前に拝読頂きそれに対してもフィードバックを頂いた。
https://tsukuru-kyoto.net/innovation-ecosystem/glocal/

岡田先生から。

「行元さんの記事から、 3つのキーワードに着目した。
①若者と社会の接点を有機的に変える
②スタンダードは嫌
③ルーティンが嫌い

ーこの言葉を頂いた時、②③について私はなんて生意気なんだろうと血の気が引いて隠れたくなったー

続)これら3つは、強烈なメッセージだと受け取っている。全て関連している。ルーティンが嫌いについて。私も、委員会ルーティンでやるものはだいたい断る。そのうちにアプローチが無くなる。ルーティンでやるものはなくなる。アイデアを出して、だから集まってもらったんです、は大いに歓迎!ペーパーでも同じことを書かない。ただ現実社会では、ルーティンの仕事がほとんどを占める。そしてそれは大切である。なので、ルーティンに遊びをどう入れるか!これがpatioの話にもつながる、ルーティンにもレジリエンスが必要。揺れる・振れる(触れる)・ずれるのゆふずれの文化*、ルーティンにも一息つく。リピートしてタイムテストされて、固まって確立していく。ルーティンのためのルーティンは窒息する。風を入れる必要がある。風を入れる行為としてのゆふずれ。ソーシャルシステムを考えていく、システミックな三大話。接点、スタンダード、ルーティン。」


私は開いた口が塞がらなかった。今も別々に見えていた物事に関連性を齎していただいたことによって景色や捉え方が変わった。これはグローカルのスタッフとも共有したい、また彼ら彼女たちとの対話でも拡がりそうだ。


ーここから“スタンダード”についての話に。

岡田先生は、1978年から80年 IIASA ウィーン国際応用システム分析研究所でゲーム理論の研究をされていた。ブライアンアーサー W.Brian Arthurサンタフェ研究所招聘教授/スタンフォード大学研究者と  「デファクトスタンダード」の話をランチ(サロン)で されていた時に、「 なぜ時計は右回りなのか?」と聞かれたという。

当時、デジタル⌚は珍しくネジ巻き時計が主流で、上記の問いを起点に対話が交わされたという。そして、ヨーロッパで13世紀に建てられたある教会の塔の時計が反対周りだったという。今、当たり前のことも別の経路もあり得た。一方の経路は途絶えた。それ以降、社会経済システムが展開しているのはランダム性に依存している。(サンタフェ大学、複雑性の科学を提唱)

デファクトスタンダードという言い方があるが、スタンダードもスタンダードになる前のプロセスがある。
誰かが、何かの拍子でそうはじまった。何かの拍子でそうはじまったのが絶対正しいかではないけれど、フォローしはじめたら排除される。デファクトスタンダード。そんなん嫌や!という人がでてきたら揺れる・振れる・ずれるゆふずれをやればいい。最初にはじめた始め方に依存して以後の経路が決まってくる。人も含めて、やり方も含めて何通りもある。

経路に依存して当たり前。別のスタンダードを創ればいい。新しく創ってスタンダードにしていく、
あるところに通用するためには誰がどうはじめるかが鍵。ソーシャルイノベーションもそういうプロセスのダイナミクス 入口の決め方が後を支配する。

カウンターのスタンダードをつくるときに入口が難しいけれどみんなでとにかく集まる。
遠回りだけれど。be there!の精神

この話をきいたとき、グローカルのメンバーとアップデートしたいことが沢山思い浮かんだ。そしてそれらは簡単じゃないことばかりでワクワクした。

新しいスタンダードはダイナミックなレジリエンスでつくっていきたい。

岡田先生は、社会をトランスフォームする仕組みをつくっている。 小さな種、 不確実性やコントロールできない要因がいっぱいある。まず集まって、はじめるしかない。という

こういうことをやる人づくり、どんな風にして人が育っていくのか?

Communicative Spaces  小さな出会いの場

「これをやるために集まろう」という機能主義的ではなく enthusiasm, Enjoyが大切。


Be there!

災害も想定した工場の計画などハード面からのアプローチに向き合われた結果、究極のソフトのマインドセットのレジリエンスについてご教示いただいた。

京都大学防災研究所の所長を務められ、まちづくり、そして防災リスクマネジメント。

変えようと思ってもすぐ変わらない。政策を仮説してモニタリングしながら進んでいくと、結果トランスフォームする。国際リスクガバナンス機構(リスクガバナンスを主体とした21世紀の文明社会システムをリデザインしていくにはどんな重点項目があるのか)ガバナンスも定義が色々あり、1人の主体、1人の人間では動かせないことを痛感されたという。共通の理解をもって小さくてもいいからこうしようというアクションの実践。ゼロといえるシード、ビジョンや意志。小さな種があって色んな人が関わって仮説を設けながら動かしていくことを様々な経験から大切にされている。


“Never try to be perfect but try to be complete and then repeat step by step.”
ー決して完璧でなくてもいい。でも完全を目指して、1歩ずつ堅実に繰り返していこう。

この先生の言葉を胸に、集まり、知恵を出し合い、ダイナミックなレジリエンスを選び続けるアクションをしたい。

岡田先生、心から感謝申し上げます。
ありがとうございます。


▽ご著書は多数、私はまずこれを手に取らせて頂きました。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784862831873


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以下、memo:

ゆふずれの文化:
揺れる(ゆれる) 振れる/触れる(ふれる)ずれる

〇社会システムは生き物。人間と同じ、生きていることがポイント ⇔機械的   
★機械的な見方に(小さなブレ)を入れないといけない
 コロナ禍で、機械的マス的にやっていた世界に新しい風が吹いた。STAY HOME、することによりベランダバルコニーに出るように、みんながそれぞれのpatioにはいった。次、あたりまえでなくなることに備える

〇SMARTガバナンス
LOCAL!
目立たない、小さな些細なことが大切。★小回りが利く、軌道修正が効きやすい。ある瞬間にレベルアップする。あるセクション→全体に。

S・・・Small solid(堅実)どんな小さな取り組みでも堅実さが大切

M・・・modest(欲張りしないで身の丈にあったことを)multiple (組み合わせる)

A・・・🌠Anticipatory と Adaptive (Adoptive management) セット 
    ただ試行錯誤のAdoptiveではなく、先手をうつ先回りする手当たりを
    つけた政策を打つのが前者。仮設/説(テンポラリーに)先行して適応的ガバナンス(環境分野では順応的ガバナンスという)

R・・・Risk concerned, Responsible  

T ・・・Transform

うまくいけば、スパイラルダイナミクスに。

…絶対うまくいく!! 🙂

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